迷ったら重力!ダムの3大分類『重力式・アーチ式・ロックフィル』完全攻略
電験三種「電力」科目の水力発電で頻出『ダムの種類』を、重力式・アーチ式・ロックフィルの3大分類に絞って解説。構造の違い、必要な地盤条件、メリット・デメリット、そして覚えるべき施工例まで網羅。暗記フレーズ『迷ったら重力、採用数トップ』で分類問題は1秒で判別できます。
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この記事で身につくこと
「ダムの種類」と聞いた瞬間、うんざりした顔になる方が多いんです。名前が似ている、写真を見ても違いが分からない、覚えても翌週には混ざっている。まったく同じ悩みを、私も何度も聞いてきました。
でも、安心してください。ここは丸暗記の単元ではありません。たった1つ、「そのダムは水圧を何で支えているのか」という問いを立てるだけで、3種類がきれいに分かれます。支え方が決まれば、必要な地盤条件も、メリットもデメリットも、そこから自然にぶら下がってくるからです。
この記事を読み終えると、次の状態になります。
| 身につくこと | 到達イメージ |
|---|---|
| 3種類の仕分け | 重力式・アーチ式・ロックフィルを、構造を見て即答できる |
| 支え方の理解 | 「自重」「両岸の岩盤」「積み上げ+コア」を言葉で説明できる |
| 地盤条件 | どのダムにどんな地盤が要るのかを、理由つきで答えられる |
| 選択肢の判定 | 正誤問題で「地盤条件のすり替え」に気づける |

暗記フレーズ:迷ったら重力、採用数トップ
まずはこの一言を、声に出して覚えてしまいましょう。
迷ったら重力、採用数トップ
日本のダムで最も数が多いのが、重力式コンクリートダムです。構造が単純でコストが低く、多くの現場で採用されてきました。「ダム」と言われて頭に浮かぶ、あのどっしりした壁のような姿。あれが重力式です。
このフレーズが効いてくるのは、試験本番で記憶が飛んだときです。基準になる形が1つ頭にあれば、「アーチ式は重力式と比べてどうだったか」「ロックフィルダムは重力式と何が違うのか」という比較の形で思い出せるようになります。3つを平等に暗記しようとするから混ざるのであって、1つを軸に置けば残り2つは「その変形」として整理できるのです。
ステップ1:3種類を先に眺めて、ゴールを決める
細かい話に入る前に、これから扱う3つを並べておきます。

| ダムの形式 | 水圧の支え方 |
|---|---|
| 重力式コンクリートダム | ダム自身の重さで押さえ込む |
| アーチ式コンクリートダム | アーチ作用で両岸の岩盤へ逃がす |
| ロックフィルダム | 現地の岩石を積み上げた巨大な体積で受け止める |
ダムには他にもいくつか形式がありますが、電験三種で問われるのは基本的にこの3つです。まずこの3つを完璧にしてから、余力があれば他の形式に手を伸ばす。これが遠回りに見えて一番早い順序です。
ステップ2:重力式コンクリートダム ― 重さで押さえ込む
最初に、基準となる重力式から押さえます。
何で水圧を支えているのか
名前のとおり、ダム自身の重さ(自重)です。上流側から水が押してくる力に対して、コンクリートの塊の重さで踏ん張る。断面は三角形で、下にいくほど厚くなっています。理屈がそのまま形になっている、非常に素直な構造です。
特徴の3点セット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | 断面は三角形。単純で施工しやすい |
| 支え方 | ダムの自重で水圧を支える |
| コスト | 構造が単純なぶんコストが低く、採算性が高い |
| 地盤条件 | 強固な岩盤が必要(重い堤体を支えるため) |
| 具体例 | 富山県の境川(さかいがわ)ダム など |
重い構造物ですから、それを載せる基礎地盤には強固な岩盤が要ります。ここは後で出てくるロックフィルダムとの対比ポイントになるので、頭の隅に置いておいてください。
採用数が圧倒的に多いため、具体例は挙げればきりがありません。裏を返せば、それだけ「無難で確実な選択肢」だということです。
ステップ3:アーチ式コンクリートダム ― 両岸へ逃がす
次は、少しだけ賢い構造です。

アーチが何をしているのか
上から見ると、上流側に向かって弓なりに反っています。この形のおかげで、水が押してくる力がアーチに沿って両岸の岩盤へ流れていくのです。自分の重さで踏ん張るのではなく、両側の山に受け止めてもらう。これがアーチ式の発想です。
水圧を岩盤に肩代わりしてもらえるので、堤体そのものは薄くて済みます。つまりコンクリートの使用量を大幅に節約できるわけです。
そのかわり、条件は厳しい
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支え方 | アーチ作用で水圧を両岸の岩盤へ分散 |
| メリット | コンクリートの量を節約できる |
| デメリット | 構造が複雑で、施工の難度が高い |
| 地盤条件 | 両岸の岩盤が非常に強固であること(3種類で最も厳しい) |
| 具体例 | 富山県の黒部ダム(堤高186m・日本一) |
力を岩盤に預ける以上、その岩盤が崩れては話になりません。だから条件が「強固」ではなく「非常に強固」になるのです。ここは選択肢のひっかけに使われやすいところです。
なぜ黒部ダムはアーチ式なのか
日本一の堤高186mを誇る黒部ダムは、アーチ式の代表例です。あれほどの山奥・高所へ大量のコンクリートを運ぶのは、想像を絶する大仕事になります。だからこそ、両岸の強固な岩盤という自然の条件を活かして、コンクリートの量を減らしたわけです。
「メリットが活きる現場だから、その形式が選ばれた」――この因果が見えていると、単なる暗記が知識に変わります。
ステップ4:ロックフィルダム ― 現地の材料で積み上げる
3つ目は、コンクリートダムとは発想がまるで違います。

「現地にあるもので造る」という考え方
ロックフィルダムは、現場付近にある岩石を積み上げて造ります。遠くから資材を運んでこないので、施工費用を大きく抑えられるのが最大の武器です。
ただし、岩石を積み上げただけでは水が隙間から抜けてしまいます。そこで中心部に、粘土などの遮水壁(コア)を設けます。この内側の壁が水を止め、外側の岩石が形と重さを担当する。役割分担でできているダムだと考えると分かりやすいでしょう。
巨大になる理由
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 材料 | 現場付近の岩石・砂利・粘土(現地調達) |
| 内部構造 | 中心部に粘土などの遮水壁(コア) |
| 規模 | 使える材料が限られるため、サイズが巨大になりがち |
| 地盤条件 | 多少弱い地盤でも建設可能 |
| 具体例 | 新潟県の三国川(みくにがわ)ダム |
コンクリートのような強い材料を使えないぶん、体積で勝負するしかありません。だから断面が大きく、なだらかな山のような姿になります。「材料が限られる → だから大きくする」という順番で覚えてください。
三国川ダムが形式変更になった話
三国川ダムは、当初は最もスタンダードな重力式での建設が予定されていました。ところが地質調査を重ねるうちに、現地の粘土・砂利・岩石を活用するほうが有効だという結果が出て、ロックフィルダムでの施工に切り替わったのです。
理由の第一は、材料の現地調達による施工費用の低減。加えて、自然環境の破壊を抑えられるという観点もありました。かつては、ダム建設で近隣の集落が水没することから全国で反対運動が起きていましたし、山を大きく崩せば周辺の自然環境はがらりと変わってしまいます。現在は環境保護の観点から、ダムを新設すること自体が容易ではありません。
ステップ5:分類表で一気に横並びにする
ここまでの内容を、試験で使える形に圧縮します。

| 形式 | 概要 | 地盤条件 |
|---|---|---|
| 重力式コンクリートダム | ダムの自重で水圧を支える | 強固な岩盤 |
| アーチ式コンクリートダム | 水圧をアーチ作用で両岸へ分散 | 非常に強固な岩盤 |
| ロックフィルダム | 資材を現地調達し岩石を積み上げる | 多少弱い地盤でも可能 |
地盤条件の欄を縦に読んでください。「強固」→「非常に強固」→「多少弱くても可」と、きれいに段階になっています。この並びごと覚えてしまえば、選択肢で条件が入れ替えられていても違和感で気づけます。
ステップ6:メリット・デメリットまで含めて完成させる
もう一段、長所と短所も横並びにしておきましょう。ここまで揃うと、正誤問題のほとんどの角度に対応できます。
| 形式 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| 重力式コンクリートダム | 構造が単純・施工しやすい・採算性が高い | コンクリート使用量が多い・強固な岩盤が必要 |
| アーチ式コンクリートダム | コンクリート量を節約できる | 構造が複雑・両岸に非常に強固な岩盤が必要 |
| ロックフィルダム | 材料を現地調達できる・地盤条件がゆるい | 規模が巨大になる・遮水のためのコアが必要 |
長所と短所がきれいに裏返しの関係になっている点に注目してください。アーチ式は「節約できるが、条件が厳しい」。ロックフィルダムは「地盤を選ばないが、大きくなる」。得をした分だけどこかで代償を払っている、という見方をすると記憶に残りやすくなります。
なお、ダム本体を理解したら、その水をどう導いて、どう回すのかも同じ流れで押さえておきたいところです。水路の分類が曖昧な方は水力発電の水路は『2つの問い』で即仕分け:開きょ・無圧・圧力トンネルを、水車がまだ苦手な方は水車の種類は『衝動 vs 反動』で9割攻略を先に読んでおくと、水力発電が一本の線でつながります。
まとめ

この単元でやることは、結局のところ次の3行に集約されます。
| 覚える軸 | 内容 |
|---|---|
| 支え方 | 自重(重力式)/両岸の岩盤(アーチ式)/積み上げた体積とコア(ロックフィル) |
| 地盤条件 | 強固/非常に強固/多少弱くても可 |
| 判断基準 | メリットが活きる現場条件かどうかで形式が選ばれる |
そして最後は、この一言に戻ってきてください。
迷ったら重力、採用数トップ
3つを平等に覚えようとせず、重力式を基準に置いて「アーチ式はここが違う」「ロックフィルダムはここが違う」と比較で思い出す。この覚え方に切り替えるだけで、混乱はぐっと減ります。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元で失点するパターンは、だいたい決まっています。3つ挙げますので、ご自身の理解と照らし合わせてみてください。
❌ 「土や岩石で造るダムは、弱い地盤には向かないはず」
✅ 逆です。コンクリートダムのほうが地盤への要求は厳しく、現地の土や岩石を積み上げる形式のほうが、地盤条件はゆるくなります。「材料が頑丈=地盤も頑丈でないと駄目」という連想が働きやすいのですが、判断すべきは材料の強さではなく、堤体をどうやって安定させているかです。重い堤体を一点で支えるコンクリートダムほど、下の岩盤に頼ることになります。
❌ 「アーチ式は薄いから、地盤条件もゆるいのでは」
✅ ここも真逆です。薄くできるのは水圧を両岸の岩盤に肩代わりしてもらっているからで、その岩盤が弱ければ成立しません。だからこそ地盤条件は3種類で最も厳しく、「非常に強固」という表現が使われます。堤体が薄い=負担が軽い、ではないと覚えておいてください。
❌ 構造の説明と地盤条件を、別々に暗記している
✅ この2つは必ずセットで動きます。「自重で支える → 重いから強固な岩盤」「両岸へ逃がす → 両岸が非常に強固」「積み上げる → 面で支えるから多少弱くても可」。理由から地盤条件を導ける状態にしておけば、選択肢で条件だけをすり替えられても、その場で気づけます。バラバラに覚えていると、この手のすり替えが一番危険です。
過去問ではこう出た
ダムの種類は、水力発電の分野で繰り返し問われてきた定番テーマです。当サイトの動画にひも付けられている過去問だけでも、次のとおり出題が確認できます。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成29年 | 問1 |
| 令和2年 | 問1 |
| 令和3年 | 問1 |
| 令和7年下期 | 問1 |
問番号を見て気づかれたでしょうか。すべて問1です。電力科目は水力発電から始まる構成が多く、ダムや水路、水車といった水力の基礎は冒頭で確実に取りにいくべき得点源だということが、この並びからも読み取れます。
出題形式としては、ダムの形式・構造・地盤条件を並べた正誤問題や穴埋めが中心です。前の節で見たとおり、狙われるのは構造と地盤条件の組み合わせ。分類表を丸ごと頭に入れておけば、選択肢を上から読んでいくだけで違和感を拾えます。
よくある質問
Q. 3種類以外のダムも覚える必要はありますか?
まずは3つを完璧にしてください。試験で問われる中心はこの3種類で、ここが曖昧なまま手を広げても、かえって混ざるだけです。3つの「支え方と地盤条件」がすらすら出てくるようになってから、他の形式に進みましょう。そのときも、「水圧を何で支えているか」という同じ問いを当てはめれば、新しい形式もすんなり整理できます。土台ができていれば、あとは足し算です。
Q. 具体的なダムの名前まで覚えるべきですか?
暗記の優先度は高くありません。ただ、代表例を1つずつ知っておくと理解が定着します。黒部ダムが「高所へのコンクリート運搬を減らすためにアーチ式になった」、三国川ダムが「現地の材料を活かすため重力式からロックフィルダムに変更された」――こうした背景を知っていると、形式が選ばれる理由が体感として残ります。名前を答えさせる問題より、形式の特徴を問う問題のほうが圧倒的に多いので、あくまで理解の補助として押さえてください。
Q. 水力発電は覚える用語が多くて、どこから手をつければいいか分かりません。
水力発電は「ダム → 水路 → 水車」という水の流れの順番で学ぶのが一番の近道です。ダムで水をため、水路で発電所まで導き、水車で回転に変える。この筋道に沿って並べ直すと、バラバラだった用語がつながります。用語の数に圧倒されそうなときは、まず水車の比速度の大小は?プロペラ>フランシス>ペルトンのように、比較の軸がはっきりしている単元から手をつけると勢いがつきます。1つずつで大丈夫です。焦らず、流れの順に積み上げていきましょう。
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