水車の比速度の大小は?プロペラ>フランシス>ペルトン
水車の比速度Nsは プロペラ>フランシス>ペルトン の順。「高速=低落差/低速=高落差」の関係と、H^(5/4)を電卓で処理するコツまでプロペラ・フランシス・ペルトンの大小関係と『高速=低落差/低速=高落差』のリンクまで整理し、文章問題と計算問題の両方に対応できる1記事です。
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この記事で身につくこと
「比速度」——この言葉を見た瞬間に、そっとページを閉じたくなる方、正直に手を挙げてください。大丈夫です、ほとんどの人がそうです。
理由ははっきりしています。名前に「速度」と付いているのに、単位も意味もふつうの速度と違う。そのうえ公式の分母には という、見たこともない乗数が居座っている。これでは「何を計算させられているのか分からない」となって当然です。
ですが、ここでひとつ朗報があります。比速度は、電力科目の中でも屈指の「変化球が投げにくい」分野なのです。定義も公式もひとつしかなく、式変形の余地もほぼありません。出題者としては、聞き方を変えようにも変えようがない。つまり——覚えてしまえば、そのまま点になるということです。
この記事を読み終えるころには、次の3つが手に入っています。
- 比速度とは結局「何の速度」なのか、仮想水車のイメージでスッと言えるようになる
- 分母の を、電卓のルートキーを2回押すだけで処理できるようになる
- プロペラ・フランシス・ペルトンの大小関係を、名前ではなく形と特徴で思い出せるようになる
苦手意識のある分野ほど、いざ攻略できたときの得点効率は高いものです。今日はその「得点源への昇格作業」をやっていきましょう。
暗記フレーズ:比速度大きいはプロペラ・小さいはペルトン
この単元で、試験会場で最後に頼りになるのはこの一言です。
比速度 大きいはプロペラ・小さいはペルトン
比速度の問題は、突き詰めると「大きいのはどっち?」を問うているだけ、というケースが本当に多いのです。プロペラが最大、ペルトンが最小、その間にフランシス。この並びさえ体に入っていれば、文章問題の正誤判定は一瞬で終わります。
そして、この並びには理由があります。理由まで含めて覚えると、忘れても現場で組み立て直せます。それを次から見ていきましょう。
ステップ1:比速度は「水車の種類がわかるものさし」

まず、比速度が何のために存在するのかを押さえます。
水車には、ペルトン・フランシス・プロペラなど、いくつもの種類があります。ところが、それぞれ使われる場所の条件がまるで違います。落差200mの山奥のダムで回っている水車と、落差5mの川に据えられた水車では、回転速度も、流す水の量も、出せる出力も、何もかも桁が違うのです。
そのままでは比べようがありません。そこで、「同じ土俵に立たせたら、この水車はどれくらいの速さで回るタイプなのか」を表す共通のものさしが必要になります。それが比速度です。
言い換えれば、比速度は水車の形状と運転状態を見抜くインジケーター。数字ひとつで「これはペルトンだな」「これはプロペラだな」と当たりが付けられる、そんな指標だと考えてください。
「比速度で、水車の種類がわかる」——このキャッチコピーが、この単元の全体像そのものです。
ステップ2:比速度の正体は「小さくした仮想水車の回転速度」

では、その「同じ土俵」とは何でしょうか。答えは、落差 1m・出力 1kW という条件です。
比速度の定義を、正確に書くとこうなります。
実際の水車と形状(相似)および運転状態をそのままに保ったまま、大きさだけを変えて、 単位落差 、単位出力 で運転させたと仮定したときの、 その仮想水車の回転速度
図でいえば、左上にある本物の水車を、姿かたちはそっくりそのままに、ぐっと縮めた「ミニチュア版」を思い浮かべる感じです。そのミニチュア(仮想水車)が何回転で回るか——それが比速度の値です。
「速度」という名前が付いている理由も、これでスッキリしたはずです。本当に回転速度の話をしていたのですね。
ここでひとつ、イメージの助けになる例えを。自転車のギアを思い出してください。重いギアは、坂道をゆっくり確実に上るためのもの。軽いギアは、平地を軽やかに速く走るためのもの。水車も同じで、高い落差を相手にする水車はゆっくり、低い落差を相手にする水車は速く回るようにできています。比速度は、その「ギアの重さ」を数字にしたようなものだと思ってください。
ステップ3:公式と、 を怖がらない電卓テクニック
比速度の公式は、次の1本だけです。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| 比速度 | [m・kW] | |
| 水車の回転速度 | [min⁻¹] | |
| 水車の出力(1ランナあたり) | [kW] | |
| 有効落差 | [m] |
多くの人が足を止めるのが、分母の です。「5分の4じゃなくて4分の5……そもそも電卓にそんなキーはない」と。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいテクニックです。5/4乗は、5乗してから4乗根をとること。そして4乗根は、平方根を2回とることと同じです。式で書けばこうなります。
つまり電卓の操作は、
- を5回かけて を出す
- √キーを押す
- もう一度√キーを押す
これだけ。特別な関数電卓は要りません(電験三種の試験では関数電卓は使えませんから、むしろこれが正解ルートです)。
たとえば なら、、その平方根が 、さらに平方根をとって 。 と求まりました。手が動くようになると、あれほど怖かった記号が、ただの「√2回」に見えてきます。
そして冒頭でも触れたとおり、この公式はこれ以上どうにも式変形のしようがありません。だからこそ出題側も、数値を代入させる素直な問題にせざるを得ないのです。覚えてさえいれば取れる。こんなにお得な分野は、電力科目でもそう多くありません。
なお、ここで出てくる「有効落差 」がそもそも何を指しているのか曖昧だという方は、先にベルヌーイの定理を「水版・エネルギー保存の法則」で攻略に目を通しておくと、水力発電の計算全体が一気に見通しよくなります。落差というエネルギーが、圧力や速度に姿を変えていく話です。
ステップ4:3つの水車と、絶対に覚える大小関係

さて、いよいよ本丸です。試験でいちばんよく問われるのが、水車の種類と比速度の対応です。
水車には他にも種類がありますが、電験三種で主に問われるのは次の3つ。この3つを押さえれば十分です。
| 水車 | 比速度 | 落差 | 流量 | 回転速度 |
|---|---|---|---|---|
| ペルトン水車 | 小さい | 高落差 | 少ない | 低速 |
| フランシス水車 | 中くらい | 中落差 | 中くらい | 中間 |
| プロペラ水車 | 大きい | 低落差 | 多い | 高速 |
そして、覚えるべき大小関係の絶対ルールがこれです。
プロペラ > フランシス > ペルトン
この並びを、名前の丸暗記で乗り切ろうとすると、試験本番で必ずあやふやになります。おすすめは、水車の形と、水の当て方をセットで思い浮かべるやり方です。
- ペルトン水車:山の上の高いダムから、細いノズルで水を勢いよく噴射し、お椀型のバケットに当てて回す。水の量はわずか、回転はどっしり低速。→ 比速度は小さい
- プロペラ水車:川のような低い落差のところに、船のスクリューのような羽根を沈め、大量の水でくるくる回す。→ 比速度は大きい
- フランシス水車:その中間。渦巻き状のケーシングで水を導き、中落差で幅広く使われる万能タイプ。
つまり、「高い落差=ゆっくり=比速度小」「低い落差=速く=比速度大」という一本の軸で並んでいるのです。ステップ2の自転車のギアの話が、ここで効いてきます。重いギア(高落差)ならゆっくり、軽いギア(低落差)なら速く。理屈が通っているので、忘れても組み立て直せます。
なお、それぞれの水車が「衝動水車」なのか「反動水車」なのか、という分類も同じくらいよく問われます。この2つの視点はセットで問われることが多いので、水車の種類は『衝動 vs 反動』で9割攻略も続けて読んでおくと、水車まわりの文章問題はほぼ落とさなくなります。
ステップ5:試験に出るのは「文章」と「計算」の2パターン

最後に、出題のされ方を整理しておきます。比速度の問題は、大きく2つのパターンしかありません。
① 文章問題(正誤判定・穴埋め)
「比速度とは〜である」という定義文の穴埋めや、「ペルトン水車はフランシス水車より比速度が大きい」といった記述の正誤を問うタイプ。ここで問われるのは、定義の正確さと大小関係の2点です。
② 計算問題(数値代入)
、、 が与えられて を求める、あるいは から を逆算するタイプ。公式を覚えていて、 を電卓で処理できれば終わりです。
対策としては、公式と大小関係を必ずセットで記憶すること。片方だけだと、もう片方のパターンで取りこぼします。逆に言えば、この2つを固めるだけで、比速度で出た問題はほぼ全部取りにいけるということです。
ちなみに、水力発電の分野は「水車」「ダム」「落差」がひとかたまりで出題されます。ダムの分類が手薄だと感じている方は、迷ったら重力!ダムの3大分類『重力式・アーチ式・ロックフィル』完全攻略もこの機会に押さえておくと、水力発電まるごとが安心領域になります。
まとめ
今日の内容を、もう一度ぎゅっとまとめます。
- 比速度とは、実際の水車と相似を保ったまま大きさだけを変え、落差1m・出力1kWで運転させた仮想水車の回転速度
- 公式は の1本のみ。式変形の余地がないので、覚えれば必ず得点になる
- は、 を出して√を2回。それだけ
- 大小関係は プロペラ > フランシス > ペルトン。比速度が大きいほど低落差・大流量・高速、小さいほど高落差・少流量・低速
- 出題は文章問題と計算問題の2パターン。公式と大小関係をセットで覚えるのが最短ルート
冒頭で「そっとページを閉じたくなる分野」と書きましたが、いかがでしょうか。中身を開けてみれば、覚えることは定義ひとつ・公式ひとつ・並び順ひとつ。それだけです。
苦手だと思っていた分野が得点源に変わる瞬間は、独学のいちばんの醍醐味だと思います。今日はその1つを手に入れました。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元は、間違え方にはっきりした「型」があります。事前に知っておけば、そのまま防げます。
❌「落差を1mに変えたときの、その水車の回転速度」だと思い込む
これが最も多い取り違えです。定義文の穴埋めで、「一定に保って落差だけを変えた」という選択肢を選んでしまうパターン。 ✅ 正しくは「相似(形状・運転状態)を保ったまま、大きさを変える」です。変えるのは水車のサイズであって、条件だけをいじって同じ水車を回すわけではありません。「そのままに」ではなく「相似に」——この一語の違いが選択肢の分かれ目になります。
❌「ペルトン水車は高落差用だから、比速度も大きいはず」と考える
落差が大きい=数値が大きい、という素直な連想が裏目に出るところです。 ✅ 正しくは、ペルトン水車の比速度は小さい(おおむね20〜70程度)。高落差の水はエネルギーが大きいぶん、少ない水量でどっしり低速に回せば済むのです。落差と比速度は逆向きに対応する、と覚えてください。ここを反対に覚えていると、大小関係を問う設問でまとめて失点します。
❌「比速度が大きすぎる水車を高落差で使うと、水撃作用が起きる」と答える
比速度の問題の最後に、関連知識としてくっついてくることがあるのがこれです。 ✅ 正しくは、キャビテーション(空洞現象)。流れの中で局部的に圧力が下がり、気泡が発生・消滅して羽根を傷める現象です。水撃作用は水圧管路で弁を急閉したときの圧力変動の話で、別物。比速度には「使いすぎるとキャビテーションで壊れる」という上限がある、とセットで覚えておくと安全です。
❌ ペルトン水車を「圧力エネルギーで押される水車」だと思う
ペルトン水車は衝動水車で、圧力エネルギーをノズルでいったん運動エネルギーに変えてから、バケットにぶつけて仕事をさせます。「圧力」と書かれた選択肢に引き寄せられないよう注意してください。
過去問ではこう出た
比速度は、電力科目の水力分野で安定して出題され続けているテーマです。実際の出題実績を見てみましょう。
- 平成30年 問2
- 令和4年下期 問2
- 令和5年上期 問1
- 令和6年上期 問1
- 令和6年上期 問15
ご覧のとおり、直近でも令和6年上期に2問——しかも問1と問15の両方で登場しています。ほぼ毎年のように顔を出す、と考えて差し支えありません。
出題傾向としては、問1〜問2という前半の位置に置かれることが多いのが特徴です。つまり、試験開始直後に「取れる問題」として現れる。ここを確実に拾えるかどうかが、その後の精神的な余裕にも直結します。
内容は、定義の穴埋めと大小関係の正誤判定を組み合わせた文章問題が中心で、そこにキャビテーションなど関連知識がひと問ぶんだけ紛れ込む構成が目立ちます。一方、令和6年上期 問15のようにB問題(配点の大きい問題)で扱われるケースもあり、その場合は計算がからんできます。文章だけ・計算だけの対策では片手落ちになるということです。
まずは実際の問題に触れて、自分の理解が本番で通用するか確かめてみてください。
よくある質問
Q. 比速度の単位は何ですか?「m・kW」と書かれていて意味が分かりません
もっともな疑問です。比速度は、回転速度・出力・落差という3つの量を組み合わせて作った合成量なので、m/s や kW のような素直な単位になりません。慣例として [m・kW] と表記されますが、これは「落差の単位と出力の単位を組み合わせて定義された値ですよ」という目印のようなものです。
試験対策としては、単位そのものを深追いする必要はほとんどありません。「比速度は水車の種類を表す指標値であって、実際に何かが m/s で動いているわけではない」——その理解で十分です。計算問題では、[min⁻¹]、[kW]、[m]をそのまま代入すれば答えが出ます。
Q. 出力 P には、発電所全体の出力を入れればいいのですか?
いいえ、ここは要注意ポイントです。比速度の は、水車1台(正確には1ランナ)あたりの出力です。
たとえば同じ水車が2台ある発電所で、合計出力が与えられている場合、そのまま代入すると答えが合いません。台数で割ってから使います。また、ペルトン水車で複数のノズル(ジェット)を持つ場合は、1ノズルあたりの出力で考えるのが原則です。
問題文が「1台あたり」なのか「合計」なのかは、必ずひと呼吸おいて読み直してください。公式を完璧に覚えていても、ここで取りこぼす人は少なくありません。
Q. 比速度は、大きいほど性能の良い水車ということですか?
いえ、優劣の指標ではありません。ここは誤解されやすいところです。
比速度が大きい水車は「低い落差で大量の水を扱うのが得意」、小さい水車は「高い落差で少ない水を扱うのが得意」というだけで、どちらが優れているという話ではないのです。大事なのは、その場所の落差と流量に合った比速度の水車を選ぶこと。適材適所です。
むしろ、その場所に対して比速度が大きすぎる水車を選んでしまうと、キャビテーションが起きて羽根が傷むなどの不具合につながります。比速度には「ここまでなら大丈夫」という適正な範囲がある、という捉え方をしておくと、応用問題にも対応しやすくなります。
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