水車の種類は『衝動 vs 反動』で9割攻略
電験三種「電力」科目の水力発電で頻出『水車の種類』を、衝動/反動の2大分類から落差・流量との対応、キャビテーション・水撃作用・吸い出し管・ポンプ水車までまとめて解説。文章問題の得点源にするための完全攻略記事です。
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「水車の種類」と聞いた瞬間、少し身構えませんでしたか。ペルトン、フランシス、斜流、プロペラ、カプラン、チューブラ、クロスフロー、ポンプ水車……カタカナが8つも並ぶと、それだけで覚える気力が削がれてしまいます。独学で進めていると、ここでいったんページを飛ばしてしまう方がとても多い単元です。
でも安心してください。この単元は、実はたった1つの分かれ道から始まっています。それは「水をぶつけて回すのか、水に包まれて回るのか」。ここさえ押さえてしまえば、あとは落差が高いか低いかで並べ直すだけです。丸暗記のリストが、意味のある1本の道になります。
この記事で身につくこと
- 衝動水車と反動水車の分かれ目を、水のエネルギーの使い方から説明できる
- ペルトン・クロスフロー・フランシス・斜流・プロペラの適応落差と流量を、迷わず並べられる
- 水撃作用とキャビテーションを、それぞれどちらの水車の話か取り違えずに答えられる
- 吸出し管が何をしている装置なのかを、自分の言葉で言える
- 揚水発電でポンプ水車が果たしている役割を説明できる
- 比速度の大小関係を、落差とセットで思い出せる
暗記フレーズ:ぶつけるペルトン、包まれるフランシス
水車の種類で迷ったら、まずこの一言に戻ってください。
ぶつけるペルトン、包まれるフランシス
ペルトン水車は、ノズルから飛び出した水を羽根に「ぶつけて」回します。だからランナの周りは空気です。一方フランシス水車は、ケーシングの中で水に「包まれて」回ります。周りは水でいっぱいです。
この2つが、衝動水車と反動水車それぞれの代表選手です。他の水車は、この2人のどちらの仲間かを考えれば、自然と居場所が決まります。
ステップ1:水車は「使う水のエネルギー」で2つに分かれる

水車の分類は、水の持つどのエネルギーを取り出すかで決まります。
| 衝動水車 | 反動水車 | |
|---|---|---|
| 使うエネルギー | 運動エネルギー(水の勢い) | 圧力エネルギー + 速度 |
| ランナの周囲 | 空気で満たされている | 水で満たされている |
| 水の当て方 | ノズルから噴射して当てる | ケーシング内を通り抜ける |
| 代表 | ペルトン、クロスフロー | フランシス、斜流、プロペラ |
ここで出てきた「運動エネルギー」「圧力エネルギー」という言葉、どこかで見た覚えがありませんか。そう、ベルヌーイの定理で扱った、水が持つ3つのエネルギーそのものです。水車は、あの式に出てきたエネルギーのうち、どれを機械の回転に変換するかで名前が分かれているだけなのです。
このあたりの記憶があやふやな方は、先にベルヌーイの定理を「水版・エネルギー保存の法則」で攻略を読んでおくと、この先の理解の速度がまるで変わります。遠回りに見えて、実はいちばんの近道です。
ステップ2:水車ごとの「得意な現場」を先に俯瞰する
個別の水車に入る前に、全体の地図を頭に入れておきましょう。細かい構造よりも先に、どの水車がどんな川に置かれるかを知っておくと、後の話がすべて腑に落ちます。
| 水車 | 分類 | 落差 | 流量 |
|---|---|---|---|
| ペルトン水車 | 衝動 | 高落差 | 小流量 |
| クロスフロー水車 | 衝動 | 低落差 | 大流量 |
| フランシス水車 | 反動 | 中落差 | 中〜大流量 |
| 斜流水車 | 反動 | 中落差 | 中〜大流量 |
| プロペラ水車 | 反動 | 低落差 | 大流量 |
見ていただくと分かるとおり、落差が高い現場ほど流量は少なく、落差が低い現場ほど流量は多いという関係になっています。高い所から細く落ちてくる水と、低い所を太く流れる水。日本の川の姿を思い浮かべると、この対応はとても自然です。
なお、その水車がどんなダムの下に置かれるのかを合わせて知っておくと記憶が立体的になります。ダム側の分類が怪しい方は迷ったら重力!ダムの3大分類『重力式・アーチ式・ロックフィル』完全攻略も併せてどうぞ。
ステップ3:ペルトン水車 ― 高落差の水をバケットで受け止める

衝動水車の代表格がペルトン水車です。ノズルから勢いよく噴射された水が、お椀のような形をしたバケットに当たり、その勢いでランナが回ります。高落差・小流量の現場が主戦場です。
流量を絞るニードル弁と、水撃作用という落とし穴
流量の調整にはニードル弁を使います。ところがこの弁、急に閉じると厄介なことが起きます。
水圧管の中を勢いよく流れていた水が、行き場を失って急停止する。すると管の中の圧力が跳ね上がり、配管や機器を痛めてしまいます。これが水撃作用です。
だからデフレクタが要る
対策は2つセットで覚えます。
| 対策 | 中身 |
|---|---|
| ニードル弁をゆっくり閉じる | 水の減速に時間をかけ、圧力の急上昇を防ぐ |
| デフレクタで水流をそらす | 噴流を一時的に横へ逃がし、衝撃を和らげる |
「急に止めるな、まずよけろ」。この順番で覚えておけば、試験で語句を入れ替えられても引っかかりません。
ステップ4:クロスフロー水車 ― 木の水車のイメージそのまま
道の駅や観光地で見かける、大きな木製の水車。あの姿がいちばん近いのがクロスフロー水車です。
円筒形のランナに対して、水が垂直方向に流れ込むのが最大の特徴。落差が小さく、流量が大きい場所で活躍します。水をかける位置によって上掛け式・下掛け式などの呼び分けもあります。
ここで大事なのは分類です。クロスフロー水車は、周囲が水で満たされていません。水が当たって、通り抜けていくだけ。つまり衝動水車です。
「低落差・大流量」という条件だけを見ると反動水車の仲間に見えますが、判断の軸はあくまで周囲が水か空気かです。条件表ではなく仕組みで分類する、という感覚を持っておくと安全です。
ステップ5:フランシス水車 ― 日本の主役

ここから反動水車です。まずは主役、フランシス水車。中落差向きで、現在もっとも広く採用されている水車です。構造が比較的単純で効率もよい、いわば優等生。
なぜフランシス水車ばかりなのか
理由は日本の発電所の作り方にあります。日本の水力発電の多くはダム式です。ダムは建設した時点で落差がほぼ決まってしまい、その後大きく変動しません。
落差が変わらないなら、落差の変化に対応する複雑な機構は要らない。だから、より単純で効率のよいフランシス水車が選ばれ続けている、というわけです。この理由まで押さえておくと、次の斜流水車との違いが一発で腹落ちします。
キャビテーションと吸出し管はセットで
フランシス水車を語るときに必ず出てくるのがキャビテーションです。
導水管の内部を高速で水が流れると、局所的に圧力が下がります。その圧力が飽和蒸気圧以下まで落ちると、そこで水が気化して気泡ができる。これがキャビテーションです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生の引き金 | 局所の圧力が飽和蒸気圧以下になること |
| 何が起きるか | ランナベーンの壊食、振動、騒音、効率低下、破損 |
| 対策 | 吸出し管の設置 |
そして対策の主役が吸出し管です。ランナ出口から放水面までをつなぐ管で、2つの仕事をしています。
- ランナから放出された水の運動エネルギーを、位置エネルギーとして回収し、損失を減らす
- ランナ出口の圧力を大気圧以下に保ち、反動効果を最大化して効率を上げる
衝動水車における水撃作用の位置づけが、反動水車ではキャビテーションにあたる、と対応させて覚えるのが効率的です。
余談ですが ―― 水車の損傷というと、砂や小石が当たって削れるイメージを持たれる方が多いのですが、実際の損傷の多くはキャビテーションによるものです。気泡がつぶれる衝撃だけで金属が削られていく。吸出し管を付けても損傷がゼロになるわけではない、というのが現場の実情です。
ステップ6:斜流水車 ― 可動羽根で落差の変化に食らいつく

斜流水車は、その名のとおりランナに対して水が斜めに流入する反動水車です。別名デリア水車。中落差向きで、フランシス水車と守備範囲が重なります。
では何が違うのか。答えは可動羽根です。羽根の角度を変えられるものが多く、落差の変化が大きい現場でも効率を保てます。
| フランシス水車 | 斜流水車 | |
|---|---|---|
| 羽根 | 固定 | 可動羽根が多い |
| 得意な現場 | 落差が安定している場所 | 落差の変動が大きい場所 |
| 構造 | 単純 | やや複雑 |
| 採用実績 | 最も広く普及 | 限定的 |
ステップ5で触れたとおり、日本のダム式発電所は落差が安定しています。だから可動羽根の出番が少なく、より単純なフランシス水車が主役になっている。斜流水車が少ない理由とフランシス水車が多い理由は、同じ1つの事実の裏表なのです。
ステップ7:プロペラ水車 ― 低落差・大流量の主

扇風機の羽根のような形をしているのがプロペラ水車。低落差で大量の水を流す現場に向いた反動水車です。
このプロペラ水車には、試験で混同されやすい2つの派生形があります。
| 名称 | 特徴 | 落差の目安 |
|---|---|---|
| カプラン水車 | 羽根の角度を変えられる可動羽根形。広い範囲で効率を維持できる | 低落差 |
| チューブラ水車 | 水が横から入る構造。ほぼ落差のない場所を想定 | さらに低落差 |
出題頻度そのものはペルトン水車やフランシス水車ほど高くありません。ただし出たときに、カプランとチューブラの特徴が頭の中で入れ替わっている受験生が非常に多い。「横から入るのがチューブラ、より低落差」と、向きと落差をセットで覚えておいてください。
ステップ8:ポンプ水車 ― 発電と揚水の一台二役

分類図の隅に置かれることが多いのがポンプ水車です。出題頻度は高くありませんが、揚水発電を理解するうえでは欠かせません。
数ある水車の中で、唯一「下から水をくみ上げられる」のがこの機器です。使われるのは揚水発電所。
| 時間帯 | 電力の状況 | ポンプ水車の役割 |
|---|---|---|
| 昼間 | 需要が大きく電気が足りない | 上池から水を落として発電機として運転 |
| 深夜 | 需要が小さく電気が余る | 電動機として回し、水を上池へくみ上げる |
これを毎日繰り返すことで、電力系統のバッファーとして働いています。原子力発電や火力発電は出力を細かく調整するのが得意ではないため、その調整役を揚水発電が引き受けている、という構図です。
発電もできて、ポンプにもなる。一台二役のこの機器が、系統全体の需給バランスを支えています。
ステップ9:比速度の大小関係はここに効いてくる

水車の種類を押さえたら、最後に必ずつながってくるのが比速度です。
大小関係だけ先に書いておきます。
この並び、ステップ2の落差の表とちょうど逆順になっているのにお気づきでしょうか。低落差のプロペラが最大、高落差のペルトンが最小。つまり、落差が低い水車ほど比速度は大きいという一本の線でつながっています。
比速度そのものの意味や計算での使われ方は、水車の比速度の大小は?プロペラ>フランシス>ペルトンで詳しく扱っています。種類の話とセットで読むと、両方まとめて記憶に定着します。
まとめ
最後に、試験直前に見返す用の一覧を置いておきます。この表がそのまま出題範囲だと思ってください。
| 水車 | 分類 | 落差 | キーワード |
|---|---|---|---|
| ペルトン水車 | 衝動 | 高落差 | ノズル、バケット、ニードル弁、デフレクタ、水撃作用 |
| クロスフロー水車 | 衝動 | 低落差 | 円筒形ランナ、垂直方向に流れる、上掛け・下掛け |
| フランシス水車 | 反動 | 中落差 | 最も普及、キャビテーション、吸出し管 |
| 斜流水車 | 反動 | 中落差 | 別名デリア水車、可動羽根、落差変動に強い |
| プロペラ水車 | 反動 | 低落差 | カプラン水車(可動羽根)、チューブラ水車(横流れ) |
| ポンプ水車 | ― | ― | 揚水発電、昼は発電機・夜は電動機 |
そして、迷ったら最初の一言に戻ります。
ぶつけるペルトン、包まれるフランシス
ここから枝を伸ばしていけば、8つのカタカナは怖くありません。
⚠ ここを間違える人が多い
この単元、実は取り違えのパターンがかなり決まっています。あらかじめ知っておくだけで失点が減ります。
❌ キャビテーションは「流速が下がると起きる」と覚えている
→ ✅ 引き金は圧力です。 水の話なので、つい「流速が」と読み替えたくなるのですが、気泡ができるのは液体が気体に変わる相変化の現象。条件は「局所の圧力が飽和蒸気圧以下に下がること」です。穴埋め問題では、この2語(圧力/飽和蒸気圧)がそのまま空欄になります。「最低流速以下」といった選択肢が並んでいたら、それは引っかけです。
❌ クロスフロー水車を反動水車だと思っている
→ ✅ 衝動水車です。 「低落差・大流量」という条件がプロペラ水車と似ているため、つい反動側に入れてしまいがちです。判断基準は落差ではなく、ランナの周囲が水か空気か。クロスフロー水車は空気の中で回っているので、迷わず衝動水車です。
❌ カプラン水車とチューブラ水車の特徴が入れ替わっている
→ ✅ 横から水が入るのがチューブラ、より低落差向き。 可動羽根が売りなのがカプランです。両方ともプロペラ水車の仲間で、両方とも低落差。似すぎているので、覚えるときは「向き」で切り分けてください。チューブラは、ほぼ落差のない場所を想定した構造だから水を横から入れているのです。
❌ 水撃作用とキャビテーションを、どちらの水車の話か区別していない
→ ✅ 水撃作用はペルトン(衝動)、キャビテーションは反動水車。 両方とも「水がらみのトラブル」なので混ざりやすいのですが、対策装置まで含めてペアで覚えると崩れません。水撃作用にはデフレクタ、キャビテーションには吸出し管です。
過去問ではこう出た
水車の種類は、電力科目の中でも安定して顔を出すテーマです。実際の出題実績を並べてみます。
| 年度 | 問番号 |
|---|---|
| 平成28年 | 問1/問2 |
| 平成29年 | 問2 |
| 平成30年 | 問15 |
| 令和1年 | 問1/問2 |
| 令和2年 | 問15 |
| 令和5年下期 | 問1 |
問1・問2という冒頭の位置に出ることが多いのが特徴です。ここは水力発電の基礎知識が問われる定位置で、水車の分類や適応落差を問う文章問題が中心になります。
一方で、平成30年 問15や令和2年 問15のように後半のB問題に登場することもあります。この場合は計算とセットになりやすく、揚水発電の全揚程や比速度が絡んできます。文章問題として覚えた知識が、そのまま計算問題の前提条件になるわけです。
つまりこの単元は、「覚えれば取れる問1・問2」と「理解していないと落とすB問題」の両方に効いてきます。表を丸暗記するだけで終わらせず、なぜその落差にその水車なのかまで押さえておく価値は十分にあります。
よくある質問
Q. 水車の名前が多すぎて覚えきれません。優先順位はありますか?
あります。まずはペルトン水車とフランシス水車の2つを完璧にしてください。この2つが衝動・反動それぞれの代表であり、出題頻度も突出しています。次にプロペラ水車(カプラン)、その次に斜流水車。クロスフロー水車とポンプ水車は最後で構いません。全部を同じ濃さで覚えようとすると、結局どれも中途半端になります。代表2つを軸に、他はそこからの差分として覚えるのが最短ルートです。
Q. 衝動か反動かを、その場で見分ける方法はありますか?
図が与えられているなら、ランナの周りに水が満ちているかどうかを見てください。ノズルから噴流が出ていて、羽根が空気中にあるように描かれていれば衝動水車。ケーシングに包まれて水路の中にあるように描かれていれば反動水車です。名前を忘れても、この見分け方だけで分類を答えられる問題は少なくありません。
Q. 吸出し管は「キャビテーション対策の装置」と覚えていれば十分ですか?
半分だけ正解です。確かに対策として必須の装備ですが、吸出し管の本来の仕事はエネルギーの回収にあります。ランナから出た水がまだ持っている運動エネルギーを、位置エネルギーとして拾い直し、損失を減らす。同時にランナ出口の圧力を大気圧以下に保って、反動効果を高める。効率向上のための装置でもある、という側面まで押さえておくと、選択肢の言い回しが変わっても対応できます。「対策装置」とだけ覚えていると、効率を問う文の正誤判定でつまずきます。
Q. 揚水発電の計算で、いつも符号を間違えます。コツはありますか?
発電と揚水で、損失水頭の扱いが逆になることを最初に確認する癖をつけてください。水を落として発電するときは、総落差から損失を引いた分しか使えません。逆に水をくみ上げるときは、総落差に加えて損失分まで余計に押し上げる必要があります。どちらも「損失があるぶん損をする」という向きは同じなのに、式の上では引き算と足し算に分かれる。ここが混乱の元です。問題を読んだら、まず「今は落としているのか、上げているのか」を紙の端に書いてから式を立てましょう。
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